夕凪の街 桜の国

ご存知の方も多いと思いますが,
こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」が映画化されています.映画はまだ見ていませんが,原作は随分前に読ませてもらいました.表現方法は漫画ですが,読んでいて悲しく,せつなくなったのは,この作品が初めてです.

この作品は2つの物語からなります.一方は,原爆が投下された直後の広島でいきる女性,平野皆実の家族を失った悲しみと,自身が原爆症に冒されていく様を描いた作品.もう一方は,平野皆実の弟,旭がおじいさんになった半世紀後が舞台であり,彼が時々ふっといなくなる理由を探る娘,七波が彼を追い,彼がずっと抱えていた想いを知るという作品.
前者は直接的に原爆の恐ろしさを語り,後者は原爆が多くの人の心の中に残した傷跡や想いを知らしめる.広島や長崎の原爆資料館が当時の遺品など,原爆のむごたらしさや戦争の愚かさを前面に押し出している一方で,「夕凪の街 桜の国」はそれらの街に(かつて)生きた人々の想いを静かに教えてくれる.

今でも行われているのか知らないが,小中学校での平和教育の題材にしたらよいのではないだろうか.漫画ゆえに気楽に読めるし,同じく漫画作品である「はだしのゲン」とは異なる視点から戦争や原爆について考えることができるだろう.

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