研究関係で読むブログ

http://yshouse.jp/archives/cat5/

2006年04月05日
ブログの正体を掴む方法
昨年の私のFMPセミナーの講演や、一橋大での研究発表、さらに、このヒットコンテンツブログでもずっと書いてきたAOC「Artist-oriented Community」のことは、ブログがもたらすWEB2.0の世界のことである。現在、そのWEB2.0のことを書いた「ウェブ進化論」が売れている。大ベストセラーと言える。そんな中で、また、1冊、ブログの正体に迫る本が出た。

「革命メディア ブログの正体 NO.1ブログ検索エンジンTechnoratiの挑戦」だ。これは、私も所属しているデジタルガレージグループが、共同創業者の伊藤穣一(Joi)を始めとして、今の(正確にはちょっと前の)ブログを取り巻くアメリカや日本の現状、そして、それが生みだす社会に与える可能性を書いたものだ。

私のFMPのセミナーでも示したTechnoratiからのデータ表や図表などがふんだんに入った非常に分かりやすい入門書となっているこの本、私の拙い説明でよく理解していただけてなかった方には、サポートの参考書のようなものにもなっている。ブログやSNSの普及によって起こる新しいメディアCGM(Consumer Generated Media)が生む、社会変革の可能性や、マーケティング利用や選挙利用、社会オピニオンの形成への影響など、様々な切り口でブログ文化の今後の可能性が書かれている。

特に、第3章「マスコミが注目したブログ検索の脅威」では、2005年が日本におけるブログ元年とし、Technoratiの日本サイトにおける、郵政解散選挙時の自民党と民主党の投票予想や、支持状況の推移のデータなど、選挙の動向に影響を与えかねないデータの集積推移は、今の日本にも、確実にブログが浸透して影響度を増していることが伺える。ある意味では驚きだ。また、それを数多く取り上げたマスコミの動向自体も、時代の変化を如実に表しているとも言えよう。

このTechnorati、実は私のヒットコンテンツ研究室の研究パートナーでもある。「ヒットの数理モデル構築の研究」の中で、その口コミ度を擬似的に、Technoratiによるブログ検索数字により分析しているのだ。今まで口コミは、なかなか数値化して測れなかったわけだが、精度の高いTechnoratiの数字は、充分に分析に値するデータであり、口コミの量を擬似的に代読可能な数値だと捉えたから可能になった研究でもある。このTechnoratiによる数値の推移と、マーケティングデータや販売データとの比較分析により、それぞれの影響度を計ることが可能との論理である。

現在では、ブログを無視してのマーケティング自体が、無意味となろうとしている。そのブログの正体を掴むにはこの本は非常に分かりやすく、読みやすい。リアリティのある事例がそこにあるからである。手前味噌ながらお奨め。