Re: アンフェア

前日に続いて必修科目未履修問題

どうも状況は悪い方向へ進んでいる気がします。
校長が卒業を認定する訳だが、政府はその校長の「裁量権を特例的に拡大」する模様。また、折角、まっとうなことを言っていた文科相も首相の意向に沿う様子。

<履修不足>政府が生徒の救済措置検討 リポート提出案も(毎日新聞)

どこまで拡大するのか線引きが非常に難しい。また、これをやっちゃうと現状の教育制度を国家自らが否定した形となり、今後の歯止めが効かなくなる。来年以降は文部科学省から教育委員会へのチェック、また教育委員会から各高校へのチェックが入り、現状は是正されるだろう。少なくとも数年間は緊張状態が続く。しかし、根本的な問題は何ひとつ解決していない。結局、ヤリ得なわけだし、受験における平等性も実現できていない。350コマの補習が必要な岩手県の高校など特殊なケースは別途、考えるとして、残された期間で「受験に必要な科目」の時間を削り、「未履修であった科目」を可能な限り講義するのが筋というものだ。その際、「最小限○○時間を未履修科目にあてる」という数値目標を設定しなければならない。多くの国民が受験への影響を憂慮しているのは確かなので、全く受験勉強をさせないのは無理だが、未履修科目の講義時間として大多数が「心情的に許せる」という数値目標が必要だろう。それでも時間数が足りない場合は、受験後の補習または(仮卒業として卒業させ)卒業後の補習で対応するべきである。これは時限式とし、大学もその点を考慮した上で学生を受け入れることにする。現実には出身高校と進学先の大学が地理的に離れる場合が多いため、レポートという形にして何らかの evidence を残すことにより高校卒業を保証することになるだろう。
(教員からすると、ペーパーテストに比べてレポートによる成績評価は非常に難しい。特に Web が充実した現在、それらしい文章を誰もが copy & paste で作ってしまえるのだから。自分で考えて文章を書いたのか、を評価する際、類似した文章がネット上に存在しないかをチェックし、単なるコピーに過ぎないと判断されれば不可をつける・・・その作業に要する無駄な時間がもったいない。)

最も不幸なのは当の受験生である。仮に特定の科目が必修であり、それを修得しないと卒業できないと知っていても、学校側が「大丈夫」と太鼓判を押せば信じるしかない。しかし、一方でこれまで受験に有利な状況を与えられてきたわけだから、その分の差し引きがどこかで生じるのも道理である。「補習を実施しても学生は内職するよ」という指摘もあるようだが、これは以前から行われていることであるし、学生自身が学問を学ぶという点で損をしているだけで、学生の自由意志であろう。ただし、学校側も安易に単位を出すようなことをしては真面目に勉強してきた大多数の学生が納得しないのも予想できる。その辺りのバランスをどのようにとって皆の支持を得る施策が打ち出せるかが問われる。

本質的な問題は、「学習指導要領における必修科目の選定やその意味付け」と「進学率による高校の評価」という現実との乖離である。おそらく大部分の人間は「そんなことやっても評価の対象に入れないよ」と言われれば、よく評価される問題に時間を割くだろうし、心情的には理解できる行動である。ただ学習指導要領という厳格なルールがあり、それを勝手に逸脱することは許されないのである。逸脱を許すならば学習指導要領は無価値となり、高校を受験予備校と位置づけることになる。結果として知識はあっても知恵を持たない人間が生産されるだろう。